「バイオ由来」という言葉だけで環境価値があると誤解させるパターン
EUでは2026年9月27日から、証拠のない汎用的な環境訴求が正式に規制対象になります。「バイオ由来」表示のどこまでが検証可能な事実で、どこからが訴求なのかを見分ける具体的な基準を整理します。
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「バイオ由来だから環境に優しい」という説明は、よく見かける一方で、根拠が示されないまま使われることも少なくありません。EUでは2026年9月27日から、こうした裏付けのない環境訴求そのものが規制対象になります。何が検証可能な事実で、何が訴求にすぎないのかを見分ける基準を整理します。
よくある発表パターン
ある食品包装メーカーが、新しい包装材について「バイオマス由来50%」という数字だけを打ち出して発表したとします。プレスリリースには「環境負荷の低減に貢献」という一文が添えられていますが、残り50%の原料構成、原料が可食部由来か非可食部由来か、第三者認証の有無には触れていません。読み手は「50%」という数字と「環境負荷の低減」という一文を無意識に結びつけ、根拠を確認しないまま好意的な印象を持ちやすくなります。
このパターンの問題は、数字自体が虚偽ではない点にあります。バイオマス由来50%は事実かもしれません。しかし、その50%がどう算定されたか、残り50%が何であるか、廃棄後にどうなるかが示されなければ、読み手は「バイオ由来=環境に優しい」という自分の推測で空白を埋めてしまいます。
2026年9月27日から何が変わるのか
EUの「消費者のグリーン・トランジション強化指令」(Directive (EU) 2024/825、通称ECGT)は、2024年3月に発効し、2026年9月27日から加盟国内で新しい消費者保護ルールとして適用が始まります。この指令は、根拠を示せない汎用的な環境訴求——「環境に優しい」「生分解性」「気候に配慮」といった表現——を、EUのUCPD(不公正取引慣行指令)上の不公正な取引慣行として扱います。第三者認証や公的機関による裏付けがない限り、こうした表現は使えなくなります。
これは日本企業にとっても無関係ではありません。EU域内で製品を販売・訴求する場合、対象になり得ます。バイオ由来の原料を使った製品を輸出・現地販売している企業は、自社のマーケティング表現がこの基準に照らして立証可能かどうかを確認する段階に入っています。
見分けるための具体的なチェックポイント
「バイオ由来50%」のような数字を見たとき、確認すべき点は次の3つです。
第一に、算定方法です。欧州規格EN 16785-1は、製品中のバイオマス由来炭素の割合を放射性炭素(¹⁴C)分析で検証する方法を定めています。この規格に基づく第三者認証を取得しているかどうかで、数字の検証可能性が変わります。
第二に、残りの構成です。「バイオマス由来50%」という発表は、裏を返せば残り50%が何であるかを語っていません。石油由来の樹脂と混合されている場合、その配合比率や添加剤の種類によって、廃棄後の分解性・リサイクル適性は大きく変わります。
第三に、ライフサイクル全体での評価です。バイオマス由来であることと、廃棄後に環境負荷が低いことは別の問題です。原料の栽培・収穫段階での土地利用や、廃棄段階での処理方法まで含めた評価がなければ、「バイオ由来」という一語だけで環境価値を判断することはできません。
発表する側になった時の留意点
自社が発表する立場になった場合、2026年9月27日以降のEU域内向け訴求では、「環境に優しい」のような一般的な表現を、具体的な検証可能なデータなしに使うことはできません。EN 16785-1のような認証規格に基づく数値を示し、その数値が何を測定したものか(バイオマス由来炭素の割合であって、生分解性やリサイクル適性を示すものではないこと)を明確に区別して伝える必要があります。
「バイオ由来50%」と「環境負荷が低い」は、それぞれ独立して検証すべき別の主張です。両者を1つの文でつなげて発表すると、意図せず読み手に因果関係を推測させてしまいます。
まとめ
「バイオ由来」という言葉自体は、環境価値を保証するものではありません。確認すべきは、算定方法(EN 16785-1などの第三者認証の有無)、残り構成の開示、ライフサイクル全体での評価の3点です。EUでは2026年9月27日から、こうした裏付けのない環境訴求そのものが規制対象になります。自社が発表する側になる場合も、読む側になる場合も、この3点を基準にしてください。
参照資料
- EUR-Lex, Directive (EU) 2024/825 of the European Parliament and of the Council(2024年)
- betalabservices, EN 16785-1 Verifies Bio-based Content of Products
- 消費者庁, 景品表示法(不当な表示の禁止)(最新)