EU森林破壊規制(EUDR)と日本の調達——再延期後の適用時期と何が変わるか
EUの森林破壊規制(EUDR)は再延期により大企業・中堅企業は2026年12月30日、小規模事業者は2027年6月30日から適用されます。対象7品目と、延期を先送りの理由にできない理由、日本企業への影響を整理します。
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EUの森林破壊規制(EUDR)は、当初2024年末に予定されていた適用が2度延期され、現在は2026年12月30日(小規模事業者は2027年6月30日)からの適用となっています。延期が続いているからといって対応を先送りできる規制ではありません。この記事では、EUDRの概要と日本企業が直面するリスクについて解説します。
EUDRとは何か
EU森林破壊規制(EUDR)は、世界的な森林破壊を抑制するために、EUが導入した規制です。違法または持続可能でない方法で生産された製品の輸入を禁止し、サプライチェーンの透明性を求めています。企業は、対象品目の調達過程での環境影響を証明する必要があります。
適用時期は、当初2024年12月30日とされていましたが、企業側の準備状況やシステム整備の遅れを理由に、2025年12月30日へ、さらに2026年12月30日へと2度延期されました(小規模・零細事業者はさらに半年遅い2027年6月30日から)。延期は「規制自体が撤回された」ことを意味しません。対応の先送りではなく、準備期間が延びたと捉える方が実務的です。
対象となる7品目
EUDRの対象となるのは、パーム油、コーヒー、ココア、木材、大豆、ゴム、牛肉の7品目です。これらの品目は、世界的な森林破壊に大きく寄与しているとされています。例えば、パーム油の生産は、東南アジアでの熱帯雨林の減少を招いています。EUDRは、これらの品目を取り扱う企業に対して、持続可能性の証明やサプライチェーンの透明化を求めています。
日本企業への影響
日本企業にとって、EUDRは調達プロセスに影響を及ぼす可能性があります。特に、EU市場に依存している企業は、サプライチェーンの透明性と持続可能性の証明が求められるため、調達先の見直しや、環境に配慮した生産方法の採用が必要になります。これによりコスト増やサプライチェーンの再構築が求められる場面も考えられます。
調達戦略の見直し
日本企業は、EUDRに対応するために調達戦略の見直しが必要です。まず、対象となる製品のサプライチェーンを詳細に分析し、持続可能性の証明を確保することが重要です。さらに、サプライヤーとの協力関係を強化し、環境認証を取得することが求められます。これにより、EU市場での競争力を維持し、企業の社会的責任を果たすことが可能になります。
2026年5〜7月の見直しで何が変わったか
2026年に入り、EUは簡素化の評価と運用ルールの整備を進めました。2026年5月4日に欧州委員会が簡素化に関する報告書、更新済みのガイダンス、対象品目に関する委任法令案を公表し、続く2026年7月13日には、対象品目(附属書I)を更新する委任法令と、情報システムの技術ルールを定める実施法令を採択しました。
日本企業の調達担当者が押さえておくとよい点は、次の3つです。
- 適用日は変わっていません。 大企業・中堅企業は2026年12月30日、小規模・零細事業者は2027年6月30日のままです。見直しが「適用日のさらなる延期」にはなりませんでした。
- 対象品目が調整されました。 対象から外れる品目には、牛の皮・革、再生タイヤ、種まき用の大豆などがあります。新たに加わる品目は、可溶性コーヒー、一部のパーム油誘導品、冷凍牛タンです。追加された品目が対象になるのは2027年12月30日からで、他の適用日より1年遅れます。ただし、この委任法令は欧州議会・理事会の審査を経て初めて効力を持つため、発効したかどうかは確認できていません。
- 申告の仕組みが簡素化されました。 情報システムは2026年6月末に再開し、小規模・零細の一次事業者向けの簡素化された申告などが実施法令に盛り込まれています。
これらは、本記事で述べた「対応を先送りできない」という点を変えるものではありません。一方で、自社が扱う品目が対象から外れたのか、追加されたのか、追加品目であれば2027年12月末まで猶予があるのかは、品目ごとに確認する必要があります。最新の状況は、EUバイオエコノミー市場条件ウォッチで継続して確認しています。
まとめ
EUDRは再延期により2026年12月30日(小規模事業者は2027年6月30日)から適用されますが、対象7品目に対する持続可能性の証明とサプライチェーンの透明性という要求自体は変わっていません。企業は、適用時期の延期を理由に対応を止めるのではなく、調達戦略の見直しと持続可能性を考慮したサプライチェーンの構築を進める必要があります。
参照資料
- European Commission, Deforestation Regulation implementation
- JETRO, 欧州委、森林破壊デューディリジェンス規則の簡素化と適用実質延期法案を発表(2025)
- European Commission (Environment), Commission updates product scope and tools to support EUDR(2026年7月13日)
- Arendt, EUDR simplification review published: what the 2026 package means for in-scope companies(2026年5月4日の公表内容の整理)
- 農林水産省, EUの森林減少防止に関する規則への対応について