日本のゲノム編集食品は、実際にどこまで市場に出ているのか
ゲノム編集食品の届出は、日本でこれまで13品目まで進みました。しかし、市場に出たのはそのうち一部です。届出一覧の「上市年月」を手がかりに、手続きの完了と市場の形成の間にある距離を確認します。
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「ゲノム編集食品が、日本で届出された」というニュースと、「それが店で買える」ことは、同じではありません。「届出」は、事業者が安全性に関する情報を消費者庁に届け出る手続きで、国が認可するものではありません。「上市」は、売り出しを始めることです。消費者庁の一覧(2026年8月12日更新)を見ると、届出が済んだ品目の多くは、まだ「上市未定」と記されています。この記事では、届出された品目・実際に売られた品目・売れ行きが確認できる品目を分けて整理し、制度を通ったあとに市場ができるまでの距離を読み解きます。
届出された品目は13、上市が記載されたのは5
消費者庁は、ゲノム編集技術応用食品の届出一覧を公表しています。2026年8月12日更新の一覧には、13の番号が付いた品目が載っています。以下の件数は、すべてこの時点の一覧に基づきます。マダイとトラフグには、2022年に別の系統の届出が加わっています。
一覧には「上市年月」の欄があります。ここに年月が書かれているのは、13品目のうち次の5品目です。
- GABA(ギャバ)含有量を高めたトマト(サナテックライフサイエンス):2021年9月
- 可食部増量マダイ(リージョナルフィッシュ):2021年10月
- 高成長トラフグ(リージョナルフィッシュ):2021年11月
- 高成長ヒラメ(リージョナルフィッシュ):2024年4月
- 高糖度トマト(グランドグリーン):2026年8月
残りの8品目は「上市未定」です。トウモロコシ、ジャガイモ、バナナ、ティラピア、サナテックライフサイエンスの別のトマト系統などが含まれます。なお、この一覧は届出制度の公開情報であり、売上や流通量を示すものではありません。
実際に売られてきたもの
最初に市場に出たのは、2021年のGABAトマトです。消費者庁の一覧で届出者・開発者とされているのは、サナテックライフサイエンス株式会社です。販売や発表の主体として報道・リリースに出てくるのはサナテックシード株式会社で、両社の関係は本記事では確認していません。2022年の報道記事は、家庭菜園向けに苗を配布したところ、約5,000件の応募があったと、同社関係者の発言として紹介しています。
水産物では、リージョナルフィッシュのマダイ(2021年10月)とトラフグ(2021年11月)が先に上市され、ヒラメが2024年4月に加わりました。2022年の報道は、トラフグの販売を、ゲノム編集魚の世界初の販売として紹介しています。
ここでは「届出された」「上市された」と、「売上や普及が確認できる」を分けて考えます。上市年月は、その時期に販売が始まったことを示すと読めますが、一覧に欄の定義は書かれていません。また、どれだけ売れたかは示しません。
届出から上市までの時間は、品目でばらつく
以下は、本記事の整理です。一覧の届出年月日と上市年月から、おおまかな間隔を計算しました。
- トマト(サナテックライフサイエンス):2020年12月に届出、2021年9月に上市。約9か月
- マダイ:2021年9月に届出、2021年10月に上市。約1か月
- トラフグ:2021年10月に届出、2021年11月に上市。約1か月
- ヒラメ:2023年10月に届出、2024年4月に上市。約6か月
- 高糖度トマト(グランドグリーン):2025年11月に届出、2026年8月に上市。約9か月
一方で、2023年に届出されたトウモロコシやトマトの別系統、2024年のジャガイモ、2025年のティラピア・トマトの別系統は、2026年8月時点で「上市未定」です。
ここから言えるのは、届出は市場に出るための手続きの一部であって、市場に出ることを保証するものではない、ということです。上市未定の理由は、一覧からは分かりません。販売計画が決まっていない場合も、準備中の場合もあり得ます。理由を推測で決めることはできません。
また、一覧には海外企業の届出も含まれます。日本で届出をしたことが、日本市場への販売計画をそのまま意味するかどうかも、一覧だけでは判断できません。
2026年のトマトジュースは何を示すか
2026年7月22日、サナテックシードは「ハイギャバ®トマトジュース」の本格発売開始を発表しました。同社のプレスリリースによると、販売先は「全国の一部量販店および公式ECサイト」で、190g缶1本にGABAを200mg含むとされています。
リリースは、生鮮のハイギャバトマトを長年購入してきた顧客から、ジュース化を望む声が多く寄せられたことが開発のきっかけだと述べています。これは企業自身の説明です。
この発表から確認できるのは、販売形態が生鮮のトマトから加工品(ジュース)に広がったという事実です。リリースは機能性表示食品としての表示をうたい、届出番号K521を記しています。機能性の内容は、企業の届出に基づく表示として読む必要があります。
同じリリースに、販売数量や売上の目標は書かれていません。「全国の一部量販店」がどの程度の店舗数なのかも分かりません。量販店で売られ始めたことと、事業として採算が取れていることは別の段階です。
売れ行きについて、公開情報で分かること・分からないこと
分かること:
- どの品目が、いつ届出されたか(消費者庁の一覧)
- どの品目に上市年月が記載されているか(同一覧)
- サナテックシードが、トマトジュースを量販店・ECで売り始めたと発表したこと(同社リリース)
分からないこと(今回確認した範囲で、独立した公開データは見つかりませんでした):
- 各品目の販売量・売上・生産量
- 上市後に販売を止めた品目があるかどうか
- 量販店での販売店舗数や継続性
- 「上市未定」の品目が、今後いつ市場に出るのか
リージョナルフィッシュについては、2026年6月のテレビ東京の番組紹介記事が、NTTグループとの合弁で大規模な陸上養殖施設を建設中で、2027年3月から稚魚の大量育成を始める、と伝えています。ただし、この記事にも、現在の販売実績は書かれていません。
まとめ
日本では、ゲノム編集食品の届出が13品目まで進みました。そのうち、上市年月が記載されているのは5品目で、残る8品目は「上市未定」です。
本記事の整理では、届出という手続きの完了と、市場が形成されることの間には、はっきりした距離があります。届出から上市までの間隔は、約1か月から約9か月までばらつき、届出後も上市未定のままの品目が多くあります。ただし、その理由や、販売実績、普及の程度は、公開情報からは確認できません。
「届出された」「上市された」「売れていることが確認できる」は、別の段階です。今後の企業発表や統計で、どの段階まで確認できるかを見ていく必要があります。
参照資料
- 消費者庁.「ゲノム編集技術応用食品及び添加物の食品衛生上の取扱要領に基づき届出された食品及び添加物一覧」(国の公式ページ。更新日:令和8年8月12日。届出年月日・上市年月の確認に使用). caa.go.jp
- サナテックシード株式会社.「ハイギャバ®トマトジュース 7月22日本格発売開始」プレスリリース(2026年7月22日。企業自身の発表。販売先・機能性表示の記載の確認に使用). prtimes.jp
- ビジネスインサイダージャパン.「続々登場「ゲノム編集食品」の注目ベンチャー2社に聞く」(2022年2月18日。2021年の発売開始と家庭菜園用の苗の応募数の確認に使用。事業者への取材記事). businessinsider.jp
- テレビ東京.「ガイアの夜明け」番組紹介記事(2026年6月19日。リージョナルフィッシュの陸上養殖施設の計画の確認に使用。販売実績の記載はありません). tv-tokyo.co.jp