地域資源を使うことと、地域に価値が残ることは別問題だ
「地域資源を活用した発電所」でも、燃料の多くを輸入に頼れば、電力代金の相当部分は地域外へ流れます。地域資源の利用と、地域への経済的な裨益は自動的には一致しません。その条件を整理します。
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「地域資源を活用した発電所」「地域資源で地域を活性化」という発表を見ると、その地域が経済的に潤うところまで想像しがちです。しかし、資源が地域にあることと、その利用から生まれる利益が地域に残ることは、別の問題です。この記事では、その違いがどこで生まれるのかを整理します。
「地域資源」という言葉が指しているもの
地域資源という言葉は、多くの場合「その地域に物理的に存在する資源」を指して使われます。木質バイオマス発電所であれば、地域の山林から出る間伐材や林地残材、農業由来のバイオマス発電であれば地域の農地から出る副産物、といった具合です。
しかし、「資源が地域にある」ことと、「その資源を使った事業が地域に経済的な価値をもたらす」ことは、論理的に別の主張です。前者は資源の所在地についての事実であり、後者は事業から生まれる売上・利益・雇用・税収といった価値が、誰にどれだけ配分されるかという別の問題だからです。この2つを同じ意味で使うと、「地域資源を活用している」という説明だけで「地域が潤っている」と誤解してしまいます。
どこにお金が流れるか——燃料調達の実態
木質バイオマス発電を例に、この違いを具体的に見てみます。日本経済新聞の報道(2018年)によると、当時FIT(固定価格買取制度)の認定を受けていたバイオマス発電の容量は約740万キロワットでしたが、実際に稼働していたのは約130万キロワットと2割弱にとどまっていました。国内の木質ペレットの生産量が横ばいのなか、木質ペレットの輸入量は5年間で約6倍に増え、燃料の「自給率」は約2割まで低下したとされています。
輸入燃料への依存は、その後も続いています。バイオマス産業社会ネットワークの「バイオマス白書2025」によると、2024年の木質ペレットとパーム核殻(PKS)の輸入量は合計で1,238万トンに達し、CIF平均価格はPKSが1キログラムあたり23.2円、木質ペレットが30.0円と高止まりしています。
ここで重要なのは、発電所という設備そのものは地域にあっても、その設備を動かす燃料の相当部分を海外から購入している場合、燃料代として支払われるお金の多くは、その地域どころか国内にも残らず海外へ流出するという点です。「地域資源を活用した発電所」という説明があっても、燃料調達の内訳を確認しない限り、その事業が実際にどれだけ地域資源を使っているのか、お金がどこへ流れているのかは分かりません。
誰が利益・雇用・ノウハウを得るか
燃料の調達先だけでなく、事業に関わる主体それぞれが、どのような価値を得ているかを見る必要があります。想定される主体には、原料の提供者(森林所有者・農家等)、発電・加工設備の所有者、技術やプラントを提供する事業者、原料や製品を運ぶ物流企業、電力や製品の買い手、自治体、地域住民、そして公的補助金を負担する納税者などがあります。
それぞれが得る(あるいは負担する)価値も、売上・利益・賃金・雇用・税収・ノウハウ・設備という資産・費用・リスクと多岐にわたります。原料の提供者が受け取るのは多くの場合、原料の買取代金という限定的な対価であり、発電・加工にともなう利益や、設備投資によって蓄積される技術・ノウハウは、必ずしも原料提供者や地域企業に帰属するとは限りません。
複数の事業を組み合わせることで、こうした価値をできるだけ地域内に留めようとする設計を試みている地域もあります。岡山県真庭市では、原木の製材加工とバイオマス発電、生ごみの液肥化施設、農業の6次産業化といった事業を組み合わせ、市内で生産される資源に付加価値をつけることで「モノ」と「カネ」が地域内で回る仕組みを目指しているとされています。ただし、こうした取り組みがどの程度の規模で資金循環や雇用を生んでいるかを示す定量的な数字は、今回確認できた範囲の資料には明記されていません。地域内での価値循環を狙った設計思想の一例として参照するにとどめ、効果の大きさそのものを断定はしません。
地域に価値が残る条件
「地域資源を使うこと」と「地域に価値が残ること」を切り分けて考えると、後者が成り立つかどうかは、次のような点によって左右されることが見えてきます。
- 燃料・原料の調達先:地域産の資源で完結しているか、輸入や他地域からの調達で相当部分を補っているか。
- 設備の所有・運営主体:地域の企業や自治体が主体か、地域外の事業者が主体か。
- 加工・付加価値の付与がどこで行われるか:原料のまま外部に出荷されるのか、地域内で加工されて価値が積み増されるのか。
- 雇用・技術の蓄積先:運転・保守にともなう雇用や技術が地域に残るか、外部の専門事業者に依存し続けるか。
- 税収・公的負担の収支:地域や国が負担する補助金・税制優遇と、実際に得られる税収・経済効果が見合っているか。
これらは、地域資源活用を否定する材料ではありません。むしろ、どの条件が満たされていれば地域に価値が残りやすいのかを確認するための視点です。「地域資源を活用している」という発表を見た際は、これらの条件のうちどこまでが実際に確認できるかを見ることで、期待と実績を区別できます。
まとめ
地域資源を使うことと、その利用から生まれる価値が地域に残ることは、別の問題です。木質バイオマス発電のように、設備自体は地域にあっても燃料の多くを輸入に頼れば、燃料代として支払われるお金の相当部分は地域外・国外へ流出します。地域に価値が残るかどうかは、原料の調達先、設備の所有主体、加工の実施場所、雇用・技術の蓄積先、税収と公的負担の収支といった、個別の条件によって決まります。「地域資源だから地域活性化になる」という前提を置く前に、これらの条件を確認することが出発点になります。
参照資料
- 日本経済新聞, バイオマス発電8割動かず 林業人手不足、燃料輸入頼み(2018年)
- バイオマス産業社会ネットワーク, バイオマス白書2025|トピックス|2. 輸入バイオマスの問題
- SMART ENERGY WEEK, バイオマスの活用で地方創生へ!自治体と企業の連携による取り組みを紹介