bioeconomy.jp
事例

今週のバイオエコノミー #4|作れるようになった。次は、認められること。

ドイツで、菜種油から作る化学品の大型プラントが稼働を始めました。住友化学は、バイオマス原料のLCPを実機で生産し、サンプル提供を始めました。EUの食品安全機関は、培養肉や精密発酵の審査に備える考えを示しました。今週の3つの動きを、確認できたことと、まだ分からないことに分けて紹介します。

今週の変化はXでも継続してお知らせしています。 次の変化もXで追う →

工場の設備と、その先にある扉を並べた、抽象的なイメージ

「今週のバイオエコノミー」は、世界のバイオエコノミーで実際に動いた変化を、確認できたことと、まだ分からないことに分けて紹介するコーナーです。今週押さえておきたいのは、ドイツの化学品プラントの稼働、住友化学のバイオマス原料のLCPの実機生産、EUの食品安全機関の審査への備えの3つです。どれも「作れる」の次にある、「顧客に認められる」「規制の審査を通る」という関門の話で、その先がどうなるかは、これから確かめることになります。

今週、まず見ておきたい

ドイツで、菜種由来の化学品の大型プラントが稼働を始めた

石油から作る化学品の原料を、植物から作る。この「バイオ由来の化学品」の大型プラントが、ドイツのビッターフェルトで10月6日に稼働を始めました。運営するVerbio(ベルビオ)は、菜種油から作る原料(菜種メチルエステル)を、化学反応で別の分子に作り替える設備だと説明しています。

同社の発表によれば、投資額は1億ユーロ弱で、生産能力は最大で年6万トンです。作るのは、潤滑油や洗剤、洗浄剤、プラスチックの原料になる2つの化学品(1-デセンと9-DAME)です。国と州の地域経済支援の制度(GRW)の支援も受けています。同社は「世界初の大規模なプラント」と表現していますが、これは同社自身の説明です。

ここまでは、設備ができて、稼働を始めた、という段階です。発表には、重要な但し書きがあります。製品は、使う側の企業が、それぞれの用途で品質を確認して「認定」して初めて使われるため、生産量は顧客の用途の広がりに合わせて、徐々に増えていく見込みだと書かれています。発表には、顧客名も、供給契約も、販売量も、稼働率も書かれていません。欧州、南北アメリカ、アジアから問い合わせがあった、とだけ述べられています。この発表は、運営する企業自身によるものです。

工場が動くことと、製品が買われ続けることは別です。この違いは、工場を建てれば市場はできる?や、顧客がいることと、契約があることは何が違う?で整理しています。

次に見るのは、顧客の認定が進み、具体的な顧客や契約が公表されるかどうか、そして生産量がどのように立ち上がるかです。

まだここ:設備稼働(段階的な立ち上げ)

ほかにも、こんな変化が。

住友化学が、バイオマス原料のLCPを実機で生産。サンプル提供を開始

住友化学は10月6日、バイオマス原料を使った液晶ポリマー(LCP)を、実際の生産設備で作ることに成功したと発表しました。LCPは、熱に強く、電子部品などに使われる高機能のプラスチックです。主な原料のモノマーに、一部、バイオマス由来の原料を使っています。

発表によれば、同社の社内評価(ASTM規格にもとづく)で、耐熱性、流動性、機械物性が、化石資源由来のLCPと同等だと確認されました。バイオマス由来の原料と、それ以外の原料を完全に分けて管理する方式で、製造しています。実機で作った製品のサンプルを、顧客へ提供し始めます。

一方、発表には、生産能力の数字も、顧客名も、顧客が認定する時期も、供給を始める時期も書かれていません。同社は2025年6月に量産の技術を確立したとしており、その後、規模を大きくする検討を進めてきたと説明しています。

まだここ:実機生産に成功、顧客の認定はこれから

EUの食品安全機関が、培養肉と精密発酵の審査に備える考えを示した

EUの食品安全機関(EFSA)が、次の戦略に向けた文書で、培養肉や精密発酵のような新しい分野の審査に備えるため、専門の知識を機関の内部に持つ必要がある、と提案しました(vegconomist、10月8日)。これらの分野で、リスク評価を、より速く、目的に合った形にする必要がある、とも書かれていると報じられています。

ただし、これは戦略づくりのための提案の文書で、決定ではありません。審査の手続きや期間が変わるという発表でもありません。報道では、実際に審査の申請が出ているかどうかは、書かれていませんでした。

確認中です。 EFSAの文書そのものは、今回取得できませんでした。内容は、vegconomistの報道で確認しています。原文を確認でき次第、この項を更新します。

まだここ:提案の段階、審査の変更はこれから

3つを並べると

ドイツの化学品は、設備が稼働し、顧客の認定を待っています。住友化学のLCPは、実機で作れることを確かめ、サンプルを送り始めた段階です。EUの食品安全機関は、新しい食品の審査に備える必要を示しました。どれも、「作れる」ことを示した後に、「顧客に認められる」「審査を通る」という次の関門が来る、という動きです。

今週確認できたのは、設備の稼働、実機での生産の成功、審査への備えの提案までです。顧客の認定、供給の開始、審査の結果は、まだ先です。規制の関門を越えたあとにも、事業としての別の条件があることは、培養肉は規制の関門を越えたあと、どこでつまずくのかで、米国の例を整理しています。

次に見たいのは、Verbioの顧客や契約の公表、住友化学の顧客認定と供給の時期、EFSAの文書を受けた具体的な見直しの有無です。

今回確認した主な情報源

このテーマの読む順番を見る →