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未利用資源

「未利用資源」はなぜ使われていないのか——構造から読む

林地残材の利用率はわずか9%、規格外野菜も多くが廃棄されています。「未利用=もったいない」と見る前に、収集・品質・季節性・コストという構造的な壁を確認します。

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使われずに林地に残る木材のイメージ

「未利用資源」と聞くと、まだ使われていないだけで、技術や意欲さえあればすぐに活用できると考えがちです。しかし林地残材の利用率は、政策目標を掲げても1割に届きません。「資源が存在すること」と「事業として利用できること」は別問題です。この記事では、なぜ未利用のまま残るのか、その構造を整理します。

「量がある」と「使える」は別問題——林地残材の場合

未利用資源の代表例としてよく挙げられるのが、林地残材です。伐採した木のうち、細すぎたり曲がっていたりして製材に使えない部分や枝、根株が、森林に残されたままになっています。

林野庁の令和元年版森林・林業白書によると、平成26(2014)年の林地残材の年間発生量は約800万トンでした。これに対し、実際に利用されているのはわずか約9%です。政府はこの利用率を令和7(2025)年に約30%以上へ引き上げる目標を掲げていますが、目標を立てなければならないこと自体が、「発生している」ことと「使われている」ことの間に大きな差があることを示しています。

なぜこの差が埋まらないのでしょうか。兵庫県農林水産技術総合センターの調査では、丸太の生産量に対して実際に搬出できる林地残材の量は、部位によって1〜16%程度、全体では約1割にとどまるとされています。しかも、車両系の高性能林業機械を使い、丸太と同時に運び出すという効率的な方法をとっても、搬出コストは林地残材1立方メートルあたり2,000円以下に収めるのがやっとという水準です。間伐で50立方メートル/ヘクタール分の丸太を搬出する際に、あわせて林地残材を運び出しても、森林所有者への利益還元は1ヘクタールあたり約5,000円にとどまるという試算も示されています。

つまり、林地残材が使われていないのは、技術がないからでも、需要がないからでもありません。山から降ろしてくるだけで、丸太生産のついでにやっと採算が合うかどうかという、収集・運搬にかかるコストの構造が背景にあります。「未利用資源が800万トンある」という数字と、「事業として利用できる資源がどれだけあるか」という数字は、最初から一致していないのです。

品質のばらつきと安定供給の壁——規格外野菜の場合

同じ構造は、農産物の未利用資源にも見られます。形が不揃いだったり、サイズが規格に合わなかったりする、いわゆる規格外野菜です。

規格外野菜が活用されにくい理由の一つは、加工工程の多くが機械化されていることです。カット野菜など、機械で処理することを前提にした加工事業者にとって、大きさや形がまちまちな規格外野菜は扱いにくく、積極的に取り入れにくい面があります。もう一つの理由は供給の不安定さです。青果物の品質や収穫量は天候や季節によって大きく変動するため、規格外野菜だけを安定的な原料として見込むことは難しくなります。安定供給と価格の安さを優先する事業者が、国内の規格外野菜より輸入野菜を選ぶ場合があるのは、このためです。

この壁に対応する仕組みとして、契約農家が栽培した作物をすべて買い取る「畑買い契約」のような方式が生まれています。規格や大きさで生鮮向けと加工向けに仕分けながら、契約の時点で数量を確保するという工夫です。裏を返せば、こうした契約の仕組みを作らない限り、規格外という理由だけで発生する農産物を安定的な原料として扱うことは難しい、ということでもあります。

「未利用だから安い」とは限らない

未利用資源には、「廃棄されているのだから、安く手に入るはずだ」という前提が伴いがちです。しかし前述の林地残材の例が示すように、実際にかかるのは収集・運搬・前処理のコストであり、これは資源そのものが無償であることとは別の問題です。搬出コストが2,000円/立方メートルを超えれば、その林地残材は「未利用資源」のままであり続けます。

規格外野菜も同様です。廃棄されている事実と、それを収集・選別・保管して原料として届けられることの間には、輸送距離や保管条件、選別の手間といったコストが介在します。「未利用=ゼロコストで手に入る」という見方は、この収集から供給までの工程を見落としています。

発表を読むときに確認したい視点

企業や自治体の「未利用資源を活用する」という発表を読む際は、次の点を確認すると、期待と実績を区別しやすくなります。

  • 発生量と搬出(収集)可能量は同じ数字か:林地残材のように、発生量の1割程度しか実際には搬出できない資源もあります。
  • 供給は年間を通じて安定しているか:季節や天候による変動が大きい資源は、事業の原料として見込む際に追加の仕組み(契約等)が必要になります。
  • 収集・運搬・前処理のコストは誰がどう負担しているか:「未利用だから安い」という説明だけで、このコストへの言及がない場合は要確認です。
  • 既存の用途と競合していないか:同じ資源を別の用途(建材・飼料等)で使う主体がいる場合、単純な「未利用」の扱いにはならないことがあります。

まとめ

未利用資源が使われていないのは、多くの場合、技術や意欲の欠如ではありません。収集できる量が発生量よりずっと少ないこと、供給が季節や天候で変動すること、収集・運搬・前処理にコストがかかることという、構造的な制約が積み重なっているためです。「未利用=もったいない」という直感の先に、こうした構造を確認する視点を持つと、企業や政策の発表をより正確に読めるようになります。

そしてもう一つ、確認すべき問いがあります。仮にこうした制約を乗り越えて資源が実際に使われるようになったとして、その事業から生まれる利益は、資源のあった地域に残るのでしょうか。それとも別の場所に流れていくのでしょうか。この問いは、次の記事で扱います。


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