バイオ燃料とe-fuel、何が違うか——原料・製造プロセス・向いている用途を整理する
バイオ燃料とe-fuel(合成燃料)は、どちらも脱炭素燃料として並べて語られますが、原料も製造プロセスもエネルギー効率もまったく異なります。SAFのような航空燃料の文脈で両者がどう位置づけられるかを含め、違いを整理します。
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「脱炭素燃料」という括りで、バイオ燃料とe-fuel(合成燃料)が同じもののように語られることがあります。しかし両者は原料もつくり方もまったく異なり、得意とする用途も違います。この記事では、原料・炭素の出所・製造プロセス・エネルギー効率・コストという観点から違いを整理し、SAFのような具体的な燃料がどちらの技術に属するのかを見分けられるようにします。
原料と炭素の出所が違う
バイオ燃料は、バイオマス(サトウキビ・トウモロコシなどの作物、廃食油、生ごみなどの生物由来資源)を原料とします。燃料に含まれる炭素は、もともと植物が大気中のCO2を光合成で固定したものです。
e-fuel(合成燃料)は、これとは根本的に異なります。原料は再生可能エネルギー由来の電力でつくる水素(グリーン水素)と、工場・発電所や大気中から回収したCO2です。生物を介さず、化学的にCO2と水素を合成して燃料をつくります。「炭素の出所が生物由来か、直接回収したCO2か」という違いが、両者を分ける最も基本的な線引きです。
製造プロセスが違う
バイオ燃料は、発酵(バイオエタノール)や油脂の水素化処理・エステル化(バイオディーゼル、SAFで使われるHEFA製法など)によってつくられます。原料となる生物由来の炭化水素・糖・油脂を、比較的少ない工程で燃料の形に変換します。
e-fuelは、水の電気分解で水素をつくり、その水素と回収したCO2をFT合成(フィッシャー・トロプシュ合成)やメタノール合成といった化学反応でつなぎ合わせて炭化水素をつくります。FT合成は軽油・重油に近い重質な燃料に向き、メタノール合成はガソリンに近い軽質な燃料に向くとされています。原料の確保から燃料の完成までに必要な化学変換の工程数は、バイオ燃料より多くなります。
エネルギー効率が大きく違う
e-fuelは、電力から水素をつくり、その水素をCO2と反応させて燃料にするという複数の変換段階を経るため、投入した電力エネルギーの多くが工程内で失われます。同じ電力量で比較した場合、電気自動車が100km走行できるのに対し、e-fuelを使う自動車は15〜20km程度しか走行できないという試算が示されています。バイオ燃料はこのような多段階の電力変換を経ないため、同じ観点でのエネルギー損失の構造はe-fuelとは異なります。
コスト構造が違う
e-fuelの製造コストは、原料であるグリーン水素とCO2の調達コストが大部分を占めるとされ、現時点の推計では1リットルあたり数百円規模になるとされています。水素の価格が製造コストに直結するため、再生可能エネルギー由来の電力価格が下がらない限り、コスト競争力の獲得は容易ではありません。バイオ燃料のコスト構造は、原料となるバイオマスの調達コストと供給量の制約が中心であり、SAFの供給が政策目標に届かない理由で扱った通り、原料側の制約が価格・供給量の両方に影響します。両者とも化石燃料との価格差という共通の課題を抱えていますが、その価格差が生じる要因は異なります。
向いている用途はどこで決まるか
エネルギー効率で劣るe-fuelが検討される理由は、既存の内燃機関・燃料供給インフラをそのまま使えることと、原料となるバイオマスの供給量に制約されないことにあります。航空・海運のように電動化が難しく、かつバイオマス由来原料だけでは必要量を賄いきれない可能性がある輸送分野では、バイオ燃料とe-fuelは競合する技術というより、互いの制約を補い合う関係になり得ます。バイオ燃料は原料の生物資源量という制約に、e-fuelは水素・CO2調達のコストという制約に、それぞれ直面しており、どちらか一方が他方に置き換わるという単純な構図では捉えにくい状況です。
まとめ
バイオ燃料とe-fuelは、どちらも脱炭素燃料として語られますが、炭素の出所(生物由来かCO2回収か)、製造プロセス、エネルギー効率、コスト構造のいずれも異なります。SAFのように既に実用段階にある燃料の多くはバイオ燃料(HEFA製法)に分類され、e-fuelは相対的に開発段階にあります。「脱炭素燃料」という括りで両者を同一視せず、原料と製造プロセスに立ち返って区別する必要があります。
参照資料
- 資源エネルギー庁.「バイオ燃料・合成燃料のサプライチェーン構築に向けて」. mlit.go.jp
- 日本自動車技術会.「e-fuel(再エネ合成燃料)の商用化を阻むコストの壁」. jsae.or.jp
- SBbit!.「e-fuel(合成燃料)とは何か、トヨタやENEOSも大注目『8年で10倍の成長産業』を解説」. sbbit.jp
- 資源エネルギー庁 資源・燃料部.「合成燃料(e-fuel)の導入促進に向けた官民協議会 中間とりまとめ(案)」. meti.go.jp