バイオガス発電の商業化はなぜ設備稼働だけでは判断できないのか
バイオガス発電はFIT制度の後押しで新規認定が増えていますが、原料契約が施設稼働後にしか結べない構造上、稼働後3〜4年は設備利用率が低くなります。原料調達・熱利用・制度依存という収益構造から商業化の条件を整理します。
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バイオガス発電の新規認定件数は増えており、2023年3月時点で過去4年間に150件増加しました。しかし、設備が稼働したことと、事業として採算が取れることは別問題です。原料調達のタイミングという構造的な制約から、稼働後数年は設備利用率が低くなる仕組みがあります。設備導入や発電量だけでは分からない、バイオガス発電の商業化の条件を整理します。
FIT制度と新規認定の増加
メタン発酵によるバイオガス発電は、全規模がFIT(固定価格買取制度)の対象になっており、2025年度の買取価格は35円/kWhです。バイオガス発電施設の新規認定は2023年3月時点で370件に達し、過去4年間で150件増加しています。数字だけを見ると普及が進んでいるように見えますが、認定件数の増加は、個々の施設が採算に乗っているかどうかとは別の指標です。
稼働後3〜4年は設備利用率が低いという構造
バイオガス発電の原料となる食品廃棄物等は、長期間の保管が難しい性質を持ちます。このため、原料の供給契約は施設が実際に稼働を始めた後でなければ本格的に結べません。その結果、施設が稼働してから安定的な原料供給網が構築されるまでの間、稼働後おおむね3〜4年は設備利用率が低くなるという構造上の遅れが生じます。これは個別事業者の努力不足ではなく、原料の性質そのものに起因する構造的な制約です。設備が完成し稼働を始めたという発表を見ても、その時点でフル稼働・フル収益が実現しているとは限りません。
熱利用まで含めて収益を見る
バイオガス発電事業の採算は、発電した電力の売電収入だけで決まるわけではありません。メタン発酵の過程で生じる熱を、施設内の加温や近隣施設への熱供給に利用できるかどうかも、事業全体の収益構造に影響します。発電のみで収支を組み立てる場合と、熱利用まで組み込んだ場合とでは、同じ設備規模でも採算ラインが異なります。「発電設備を導入した」という情報だけでは、熱利用まで含めた収益設計になっているかどうかは分かりません。
消化液の扱いも収支に関わる
メタン発酵の後に残る消化液は、液体肥料として農地に還元できる場合がありますが、その受け入れ先の確保・輸送・散布コストも事業全体の収支に含まれます。経済産業省の資料は、消化液を散布する農地を十分に確保できないことが、実際に事業が頓挫する要因の一つになっていると指摘しています。消化液の処理・活用先が確保できていない場合、廃棄物としての処理コストが追加でかかることになり、原料受け入れ時のゲート料金(処理費用としての収入)だけで採算を見込むことはできません。原料の受け入れから発電・熱利用・消化液処理までの一連の工程全体で、誰が費用を負担し誰が収入を得るのかという収支構造を見る必要があります。
日本と欧州で制度・条件が異なる
バイオガス発電の制度設計・原料条件は地域によって異なります。日本のFIT買取価格・原料の種類(食品廃棄物中心)・熱利用のインフラ整備状況は、欧州の制度・原料構成(農業残渣・エネルギー作物中心の地域が多い)とは前提が異なります。海外の事例で示された採算モデルや稼働率を、そのまま日本の事業環境に当てはめて判断することはできません。
まとめ
バイオガス発電の商業化は、FIT認定件数や発電設備の導入だけでは判断できません。原料契約が施設稼働後にしか結べないという構造から生じる稼働後数年間の低稼働率、熱利用の有無、消化液の処理・活用コストまで含めた収益構造を確認する必要があります。制度・原料条件が地域によって異なるため、海外の事例をそのまま日本に当てはめることもできません。
参照資料
- 一般社団法人日本有機資源協会.「メタン発酵バイオガス発電の自立化に向けたコスト低減方策」経済産業省 調達価格等算定委員会 第97回資料5(2024年10月30日). meti.go.jp
- 経済産業省 総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 新エネルギー小委員会(第13回).「バイオマス発電事業の現状と課題」. meti.go.jp