食品ロス系副産物の商業化はなぜコストで負けるのか
「捨てられているのだから資源化すれば得」という前提は、食品ロス・食品残渣の実態を見ると成り立ちません。発生量・分散性・水分・品質変動・物流・買い手という6つの制約から、商業化がコストで負ける理由を整理します。
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「食品ロスはもったいない資源だから、資源化すれば得なはずだ」という発想をよく見かけます。しかし実際には、食品ロス・食品残渣を飼料・肥料・エネルギーへ転換する事業の多くは、コスト面で新品の原料や既存の処理方法に負けています。なぜ「捨てられているもの」を活用する事業が、想定ほど簡単に採算に乗らないのか。発生量・分散性・水分・品質変動・物流・買い手という6つの制約から整理します。
「もったいない」と「事業として成立する」は別問題
日本の食品ロス・食品残渣(食品ロス・食品残渣)を飼料化・肥料化・エネルギー化する取り組みは、食品リサイクル法のもとで「飼料化を最優先、次に肥料化、それも難しい場合にエネルギー利用(メタン発酵等)」という優先順位が示されています。この優先順位自体、飼料化が最も採算に乗りやすく、順位が下がるほど採算が難しくなるという実態を反映したものです。「捨てられているのだから活用すれば得」という前提は、次に挙げる複数の制約を無視した単純化です。
発生量と回収可能量は違う
食品ロスの発生量が大きいことと、事業化に使える量として回収できることは別問題です。食品廃棄物は発生源(食品工場・小売・外食・家庭)によって性質が大きく異なり、異物混入率が極めて低い食品工場由来の廃棄物は飼料化に向いていますが、外食産業や家庭からの廃棄物は異物混入・分別の不確実性が高く、同じ条件では扱えません。発生している総量のうち、実際に均質な原料として安定的に回収できる量は、その一部に限られます。
水分・品質変動・保存性という原料側の制約
食品廃棄物は一般に水分含有率が高く、輸送・保管のコストを押し上げます。また原料の内容が日々変動するため、飼料・肥料としての成分を一定に保つことが難しく、品質のばらつきが買い手からの信頼を損なう要因になります。腐敗しやすいという保存性の低さも、収集から処理までの時間的制約を生みます。これらは、均質な原料を安定調達できる新品の穀物・化学肥料と比較したときの、構造的な不利です。
収集・物流・前処理というコストの見えにくい部分
食品廃棄物は発生源が分散しているため、収集・運搬のコストが、集中生産される新品原料と比べて割高になりやすい構造があります。異物除去・分別・乾燥といった前処理の工程も追加のコストです。これらの物流・前処理コストは、最終製品の価格に転嫁しにくいため、多くの事業者の採算を圧迫する要因になります。廃棄物処理を安さだけで委託先を選ぶと、不適正処理のリスクも生じるため、コストを削るだけの解決も難しい構造です。
買い手の存在——作れることと売れることは別
飼料・肥料に転換できることと、それを継続的に買ってくれる相手がいることは別の問題です。飼料の場合、品質が基準に満たなければ返却されるリスクがあり、これが安定供給の障害になります。肥料化(堆肥化)の場合も、需要とのバランスが取れなければ在庫が積み上がり、事業として続けられません。「作れる」ことを確認した後、継続的な販売先が確保できているかを分けて見る必要があります。
処理費用は誰が負担するのか
食品廃棄物の資源化事業の採算は、多くの場合、廃棄物を出す側が支払う処理費用(受け入れ料金)に支えられています。処理費用の水準、輸送距離、最終製品(飼料・肥料)の販売価格という複数の収入・費用の組み合わせで採算が決まり、どれか一つでも条件が崩れると事業性が失われます。「資源化すれば環境にも経済にも良い」という単純な理解ではなく、誰が処理費用を負担し、最終製品が誰にいくらで売れるのかという収支構造を、個別の事業ごとに確認する必要があります。
まとめ
食品ロス系副産物の商業化がコストで負けやすいのは、発生量と回収可能量の差、水分・品質変動・保存性という原料側の制約、分散した発生源に伴う収集・物流コスト、買い手の確保という需要側の制約、処理費用の負担構造が重なり合っているためです。「捨てられているから資源化すれば得」という前提を置く前に、これらの制約が個別の案件でどう効いているかを確認する必要があります。
参照資料
- フードシステム研究27巻4号.「食品廃棄物飼料化システムの現段階と課題」(2021年). jstage.jst.go.jp
- 農林水産省.「食品ロス・食品リサイクル」. maff.go.jp