カスケード利用とリサイクル、似ているが違う資源循環の考え方
EUはカスケード利用とリサイクルを対立する選択肢ではなく、1つの階層の中に位置づけています。この違いを整理し、素材の物理的な性質によって使い分ける視点を提示します。
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カスケード利用とリサイクルは、どちらを選ぶかという対立する選択肢のように語られがちです。しかしEUの再生可能エネルギー指令(RED III)は、リサイクルをカスケード利用という1つの階層の中の一段階として位置づけています。この関係を理解すると、素材ごとに何を確認すべきかが見えてきます。
カスケード利用とは何か——EUが定めた6段階の階層
カスケード利用とは、資源をより価値の高い用途から順に使い、最後にエネルギー利用・廃棄へと段階的に移していく考え方です。2023年に成立したEUの再生可能エネルギー指令改正(RED III、指令(EU) 2023/2413)は、木質バイオマスについてこのカスケード利用の原則を明文化しました。欧州パネル工業連盟(EPF)によると、その優先順位は次の6段階です。
- 耐久性のある木材製品(建材・家具など)
- 製品寿命の延長(修理・再使用)
- 再使用
- リサイクル
- バイオエネルギー利用
- 廃棄
ここで重要なのは、リサイクルはカスケード利用と並ぶ別の概念ではなく、この階層の中の4番目の段階として組み込まれていることです。EU加盟国は、エネルギー生産者への補助金がこの階層より上位の用途(木材製品市場)を圧迫しないよう制限することが求められています。つまり「木材をバイオマス発電に回す」という選択は、より価値の高い建材・リサイクル用途を差し置いていないかという規制上の論点を伴います。
リサイクルとは何か——素材によって性質が変わる
リサイクルは、使用済みの資源を同じ素材として再生する手法です。ただし、この「同じ素材として」が実際にどこまで成り立つかは、素材の物理的な性質によって大きく異なります。
アルミニウムは、その代表例です。米国アルミニウム協会(The Aluminum Association)によると、アルミニウムのリサイクルは新地金の製造と比べて必要エネルギーを約95%削減できます。融点が660度と低く、溶解し直すだけで品質を落とさず何度でも同じ用途に戻せるため、理論上は劣化のない閉じたループになります。
一方、紙のリサイクルは事情が異なります。紙の繊維(パルプ)は再生のたびに短くなり、これまでは「5〜7回が限界」という見方が一般的でした。ただし、欧州の段ボール工業会(FEFCO)とダルムシュタット工科大学の研究では、同じ繊維を25回リサイクルしても機械的強度の低下は5〜12%にとどまるという結果も報告されています。回数の上限は繊維そのものの物理限界というより、実際の回収工程での混入・ロスといった運用上の制約による部分が大きいようです。
決定的な違い、そして入れ子構造
カスケード利用とリサイクルは、次のように整理できます。
- カスケード利用:資源を段階的に価値の異なる用途へ移していく、より広い階層的な考え方
- リサイクル:その階層の中の一段階で、同じ素材として再生するプロセス
そしてリサイクルが「劣化のない閉じたループ」になるか「段階的に価値が下がるカスケードの一部」になるかは、素材の物理的な性質で決まります。アルミニウムのように理論上劣化しない素材は、リサイクル自体がカスケードの外側で完結しえます。一方、紙のように繊維が劣化する素材では、リサイクルを繰り返すこと自体が、印刷用紙→段ボール→さらに低グレードの紙製品へと移っていくカスケード利用そのものです。
「カスケード利用かリサイクルか」という二択ではなく、「自社が扱う素材は、リサイクルを重ねても品質を保てる素材か、それとも段階的に価値が下がっていく素材か」を確認することが出発点になります。
実務上どちらを気にすべきか
木質バイオマス・紙など、劣化を伴う素材を扱う場合は、自社の用途がRED IIIの6段階のどこに位置するかを確認してください。特にEU向けにバイオマス発電用の木材を調達・供給している場合、より上位の用途(建材・リサイクル原料)と競合していないかは、EU加盟国の補助金制度上の論点になり得ます。
アルミニウムなど劣化しにくい素材を扱う場合は、実際の回収・再生工程で品質がどこまで維持されているかを確認してください。理論上のリサイクル率と、自社のサプライチェーンで実際に達成できている再生品位は別の問題です。
まとめ
EUの規制上、リサイクルはカスケード利用と対立する選択肢ではなく、その階層の中の一段階です。両者の実務上の違いは、素材が劣化するかどうかで生まれます。木質バイオマスなど劣化する素材はRED IIIの6段階のどこに位置するかを、アルミニウムなど劣化しにくい素材は実際の再生工程での品質維持を、それぞれ確認することが次のステップになります。
参照資料
- European Panel Federation, Press Release: EPF applauds the inclusion of the cascade use of wood principle in the Renewable Energy Directive (RED III)(2023年)
- The Aluminum Association, Sustainability – Recycling
- MM Group, Paper fibres - Recycling without limits