食品ロスとは何か——発生する段階と、資源として使える量は別問題
食品ロスと食品廃棄物は範囲が違います。可食部と不可食部、家庭系と事業系、発生量と資源利用可能量——これらを区別しないまま「もったいない」で語ると、実際に何が資源化できるのかが見えなくなります。
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「食品ロス」という言葉は、廃棄される食べ物全般を指す言葉として使われがちですが、正式には範囲が決まっています。本来食べられるのに捨てられる部分だけを指し、骨や皮のような食べられない部分は含みません。この違いを押さえないまま「もったいない」で語ると、実際にどれだけの量が資源として使えるのかが見えなくなります。この記事では、食品ロスの範囲・発生段階・日本の統計を整理し、食品ロス系副産物の商業化がなぜコストで負けるのかを読む前提を作ります。
食品ロスと食品廃棄物は範囲が違う
食品ロスは、本来食べられるにもかかわらず捨てられる食品を指します。これに対して食品残渣(食品廃棄物)は、野菜の皮や骨のような食べられない部分(不可食部)と、食べられるのに捨てられる部分(可食部)の両方を含む、より広い言葉です。つまり食品ロスは、食品廃棄物のうち可食部だけを切り出した部分集合にあたります。
この区別が重要なのは、可食部の削減(食品ロス対策)と、不可食部を含めた全体の資源化(食品廃棄物の飼料化・肥料化・エネルギー利用)が、目的も対策の方向性も異なるためです。可食部はまず「捨てずに食べる」ことが優先され、不可食部は最初から資源として活用する対象になります。
発生する段階——どこで生まれるか
食品ロスは、サプライチェーンのさまざまな段階で発生します。生産・収穫の段階で規格に合わず出荷されない農産物、製造・加工段階で発生する規格外品・返品、流通・小売段階で賞味期限が近づき廃棄される商品、外食産業での調理くず・食べ残し、家庭での食べ残し・期限切れによる廃棄まで、発生する場所によって性質がまったく異なります。段階が異なれば、発生する量の把握のしやすさも、対策の打ちやすさも異なります。
家庭系と事業系——日本の統計
環境省・農林水産省・消費者庁が共同で公表している推計によると、日本の食品ロス量は令和6年度で約461万トンとされ、このうち家庭系が約224万トン、事業系(製造業・卸売業・小売業・外食産業の合計)が約237万トンと、ほぼ半分ずつを占めています。この量は年度によって変動があり、令和5年度は約464万トン、令和4年度は約472万トンと推計されています。事業系食品ロス量については、令和4年度に政府の削減目標を達成したと発表されています。
家庭系と事業系では、発生の性質が異なります。事業系は発生源(工場・店舗)が特定でき、比較的均質な廃棄物として把握しやすい一方、家庭系は発生源が無数に分散しており、量の把握も対策の実行も事業系より難しくなります。
発生量と資源利用可能量は別の数字
年間461万トンという発生量の数字は、そのまま「461万トンが資源として使える」ことを意味しません。家庭から出る食品ロスは、他の生ごみと混ざった状態で収集されることが多く、分別・回収のコストが資源化の障壁になります。事業系であっても、発生源によって異物混入率や成分の均一性が異なり、飼料・肥料として使える品質を満たす量は、発生量全体よりかなり少なくなります。「発生量が大きい」ことと「事業化に使える量として回収できる」ことの間にある距離は、食品ロス系副産物の商業化がなぜコストで負けるのかで詳しく扱っています。
まとめ
食品ロスは食品廃棄物のうち可食部だけを指す、より狭い概念です。発生する段階、家庭系か事業系かによって性質は異なり、日本全体で年間約461万トン(令和6年度推計)という発生量も、そのまま資源として使える量を意味するわけではありません。この発生量と資源利用可能量の距離を理解した上で、個別の資源化事業の可能性を検討する必要があります。
参照資料
- 農林水産省.「食品ロスとは」. maff.go.jp
- 環境省.「我が国の食品ロスの発生量の推計値(令和6年度)の公表について」. env.go.jp
- 農林水産省.「令和4年度の事業系食品ロス量が削減目標を達成」. maff.go.jp